カスハラ対策を強化するコンタクトセンター向けAIソリューション|オペレーター支援の最新手法
2025.11.12
ブログ近年、コンタクトセンターにおいて深刻化しているのが、顧客からの過度な要求や暴言などによるカスタマーハラスメント(カスハラ)です。
社会全体で顧客対応の適正化が求められる一方、現場ではオペレーターが過剰なストレスを抱え、精神的負担の増加や離職率の上昇といった問題が後を絶ちません。
こうした状況のなかで企業にとって重要なのは、顧客満足と同時に、働く人が安心して応対できる環境の整備です。
その鍵を握るのが、AIを活用した新しいカスハラ対策。AIは、発話内容の自動解析やリアルタイム警告、管理者への迅速なエスカレーションなどを通じて、現場の安全と品質の両立を支援します。
本コラムでは、AIを活用した最新のカスハラ対策手法を解説するとともに、導入時に押さえておきたいポイントや実践的な活用例を紹介します。
-NEWS-
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目次
- カスハラの現状とコンタクトセンターが抱える課題
- カスハラ対策はAIでどう変わる?
- カスハラ対策に役立つSprinklr活用法
- ケーススタディ|AI活用で進化したコンタクトセンター
- 今後の展望|AIが拓くオペレーター支援の未来
- まとめ
カスハラの現状とコンタクトセンターが抱える課題

近年、オペレーターを精神的に追い詰めるカスタマーハラスメント(カスハラ)は増加傾向にあります。単なるクレームではなく、攻撃的言動や不当要求、長時間拘束など多岐にわたり、企業運営と従業員の安全に深刻な影響を与えています。
①カスハラの実態
カスハラは単なる「厳しいクレーム」ではなく、以下のような行動を伴います。
| カスハラの特徴 | 具体的な行為例 | 業種別の特徴 |
| 攻撃的・威圧的 | 暴言、人格否定、脅迫的な発言 | 金融、公共サービス、通信 |
| 不当な要求 | 過剰な金品の要求、マニュアル外の対応強制 | EC、小売、サービス業 |
| 長時間拘束 | 目的なく、担当者交代を拒否し続ける | 全業種共通 |
特に、金融・通信業界では専門的な知識を要するやり取りが多く、要求がエスカレートしやすい傾向があります。EC・小売業界では、返品や保証に関する理不尽な要求が目立ちます。
②オペレーターへの影響
カスハラは、企業の存続にも関わる深刻な影響をオペレーターにも及ぼします。
- 精神的負担による離職率の上昇:精神的な疲弊から休職や離職を選択するオペレーターが増加し、ノウハウの蓄積が困難になります。
- 品質低下(対応ミス、モチベーション低下):過度なストレスや恐怖心により冷静な判断ができなくなり、対応ミスや誤案内が発生。これが二次クレームにつながるケースもあります。
- 教育・採用コストの増大:離職率の上昇により新人教育が常態化し、採用・教育にかかるコストが増大。人材定着が難しくなる悪循環を招きます。
③従来型対策の限界
これまで多くの企業では、カスハラ対策としてマニュアルの整備やロールプレイング研修を実施してきました。しかし、こうした従来型の取り組みには明確な限界があります。
- マニュアル整備や研修だけでは対応に限界:悪質なクレームや予測不能な発言にすべて対応できるマニュアルを作成することは困難です。特に経験の浅いオペレーターは、想定外の状況で冷静に判断することが難しく、現場での対応力に差が生じます。
- 管理者の負担増大(モニタリング・クレーム対応):危険な通話をリアルタイムで監視することは現実的に難しく、管理者はエスカレーション対応に追われがちです。その結果、オペレーターの育成やフォローといった本来の業務に十分な時間を割けなくなっています。
カスハラ対策はAIでどう変わる?
AIは、「リアルタイム性」と「客観性」という点で、従来の対策の限界を大きく打破します。
①AI導入の全体像
カスハラ対策におけるAIの活用領域は多岐にわたります。
| AI技術 | 活用領域 | AIの強み |
| 音声認識 | リアルタイムでの通話内容のテキスト化 | 発言内容の正確な記録と分析 |
| 感情解析 | 声のトーン、話速、抑揚の分析 | 攻撃性の兆候を客観的に把握 |
| NGワード・キーフレーズ検知 | 暴言、脅迫、不当要求の検知 | 危険度の自動判定と迅速なアラート |
| 声紋認証 | 悪質な常習クレーマーの特定 | 対応履歴と方針の即時連携 |
AIは、人の主観に頼らず、発生前の兆候や発生中の状況をリアルタイムで客観的に把握し、適切なアクションを促します。
②AIによるオペレーター支援
AIは、オペレーターの「盾」として、心理的・実務的な両面から強力にサポートします。感情や言葉の分析を通じて、危険な状況をいち早く察知し、適切な対応を導くことが可能です。
- 感情解析によるストレス検知:顧客の声のトーン上昇やオペレーターのストレスレベルをAIがリアルタイムで解析。異常を検知した際には、管理者や本人に即座にアラートを送信し、早期対応を促します。
- NGワード・攻撃的トーンの自動検知アラート:「殺す」「訴える」などのNGワードや威圧的な話し方を検知した瞬間に警告を表示。同時に通話の録音や関連マニュアルへのアクセスを自動で促し、安全な対応を支援します。
- オペレーターへのリアルタイムアシスト:顧客の要求内容やハラスメントの種類をもとに、AIが過去の成功事例や法的対応マニュアルを瞬時に提示。オペレーターがその場で最適な対応を選択できるようサポートします。
③管理者の負担軽減
AIは、管理者のモニタリング業務や判断の負担を大幅に軽減し、リスクの早期把握と意思決定の効率化を実現します。
- AIによる応対ログ自動分析:すべての通話ログをAIが自動で分析し、ハラスメントの発生頻度・傾向・発生しやすい時間帯を可視化。これにより、管理者が手作業で行っていたモニタリングの時間を大幅に削減できます。
- ハラスメント発生時のエスカレーションを迅速化:危険度が一定レベルを超えた際、AIが管理者のPCやスマートフォンに即座に通知を送信。管理者は全通話を常時監視することなく、最も危険な通話に集中して対応できます。
- 属人的判断からデータドリブンな判断へ:過去の膨大なハラスメントデータをAIが解析し、「正当なクレーム」と「不当な要求」を客観的に区別する基準を提示。これにより、担当者ごとの対応のばらつきを防ぎ、組織全体で一貫した判断が可能になります。
カスハラ対策に役立つSprinklr活用法
Sprinklr(スプリンクラー)は、コンタクトセンターの課題解決にとどまらず、SNS上のリスク管理からVOC(顧客の声)分析までを網羅する、オムニチャネル対応の統合型カスタマーエクスペリエンス(CX)管理プラットフォームです。
カスハラ対策においても、この統合力が強力な効果を発揮します。
①SNS上のカスハラリスクを早期発見
- SNS監視機能によるリスクワード検知:AIがTwitter、InstagramなどのSNS上をリアルタイムで監視し、企業やブランドに対する誹謗中傷や攻撃的なリスクワードを検知します。
- 拡散前に問題投稿を特定し、迅速に対応:炎上リスクが高まる前に危険な投稿を特定し、コンタクトセンターや広報チームに即時アラートを連携。問題の社外拡散を未然に防ぎ、企業ブランドの信頼を守ります。
②VOC分析で顧客の不満要因を可視化
- 通話録音・チャットログ・SNS投稿を一元管理:複数チャネルに散在する顧客の声をSprinklr上に集約。AIが自動で内容を分析し、課題の全体像を可視化します。
- AIが不満の傾向を抽出し、カスハラ発生前に改善策を立案:顧客の不満が集中している商品・サービスや対応フロー上のボトルネックを特定。クレームやハラスメントが起こる前に、根本原因の改善につなげる「予防型対策」を実現します。
③オペレーター支援によるストレス軽減
- 感情解析によるリアルタイムアラート:通話やチャット中の攻撃的トーンや緊張状態をAIが検知し、オペレーターへ警告を表示。危険な状況を早期に察知できます。
- 危険な応対に管理者が即介入できる仕組み:アラートと同時に管理者にも通知が送信され、チャットでのフォローや通話介入が即座に可能に。オペレーターの精神的孤立を防ぎ、安心して対応できる環境を整えます。
④企業全体でのナレッジ共有
- カスハラ事例を体系的に蓄積:AIが検知した危険な応対事例や対応プロセスを自動でログ化し、タグ付け・分類してデータベース化します。
- 全オペレーターが活用できる対応マニュアルや教育資料に展開:蓄積された事例をもとに、より実践的な対応マニュアルを自動生成。新人研修やケーススタディに活用することで、組織全体のカスハラ対応力を底上げします。
ケーススタディ|AI活用で進化したコンタクトセンター

AIの導入により、各業界のコンタクトセンターでは「カスハラ対策」と「業務効率化」を両立する新たな仕組みが生まれています。ここでは、代表的な4つの事例を紹介します。
①通信業界A社
導入ソリューション:音声認識AIによるリアルタイムキーワード・感情検知
AIが顧客の発言に含まれる攻撃的な発話をリアルタイムで検知し、オペレーター画面に「冷静に対応を継続してください」といった指示や、エスカレーションの準備を促すアラートを表示。
AIによる即時支援が心理的な盾となり、オペレーターの安心感が向上しました。その結果、精神的ストレスが軽減し、離職率が前年比20%改善という成果を実現しました。
②EC業界B社
導入ソリューション:VOC分析(チャット・レビュー)による不満要因の分類
AIが膨大なクレームデータやSNS上のレビューを分析し、「理不尽な要求(カスハラ予備軍)」と「正当な不満」を自動で分類。後者に該当するケースを抽出し、配送システムの表示改善やFAQの拡充といった施策を実施しました。
その結果、顧客満足度の向上と同時にカスハラ件数が15%減少。AIが「攻めのカスハラ対策」と「顧客体験の改善」を両立させた好例です。
③金融業界C社
導入ソリューション:声紋認証とCRMの連携
AIによる声紋認証を活用し、過去に問題行動があった顧客を通話開始時に自動で特定。CRMに登録された「特別対応方針」を即座にオペレーター画面へ表示する仕組みを構築しました。
これにより、対応方針の統一と属人的判断の排除を実現。常習クレーマーへの対応時間を大幅に削減し、オペレーターの負担軽減と業務効率化を同時に達成しました。
④公共サービスD社
導入ソリューション:感情解析AIを核としたリアルタイム管理体制
感情解析AIが、顧客の声のトーンの変化からハラスメント発言の「兆候」を自動検知。その情報を管理者のダッシュボードへ即時通知することで、管理者が早期に通話へ介入できる仕組みを整えました。
初期段階で問題を収束できるようになり、オペレーターの心理的安全性が大幅に向上。AIが「守り」と「支援」の両面から現場を支える体制を実現しました。
今後の展望|AIが拓くオペレーター支援の未来
AI技術の進化は、コンタクトセンターの働き方を根本から変えつつあります。
これまでの「支援ツール」という位置づけから、「共創パートナー」へと進化し、オペレーターの負担軽減と顧客体験(CX)の質向上を同時に実現します。
AI × 人の協働モデル → オペレーターは高度対応に集中
今後のAIは、オペレーターを補助する存在から、共に課題を解決する協働者へと進化します。ルーティン業務はAIが担い、人間はより高度な判断・共感力を要する領域に集中できる環境が整います。
【AIが担う業務例】
- 顧客情報・過去履歴の検索
- 応対記録の自動入力
- NGワード・感情トーンのリアルタイム検知
- 定型的な一次対応・FAQ回答
【オペレーターが集中できる領域】
- 顧客の感情理解・共感対応
- 複雑なクレームや判断が必要なケース
- 倫理的配慮や企業イメージを意識した対話
【期待される効果】
| 項目 | 期待できる成果 |
| ストレス軽減 | クレーム対応による精神的負担を低減 |
| 業務効率化 | 応対時間の短縮・ミスの削減 |
| 定着率向上 | やりがいある業務への集中による離職防止 |
カスハラ対策から「予防型CX」への進化
AIの分析力が進化することで、カスハラ対策は「事後対応」から「事前予防」へとシフトしています。
【予防型CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?】
クレームやトラブルを防ぐために、顧客体験全体を先回りして改善していくアプローチ。
【AIによる予防の仕組み】
- VOC分析(顧客の声分析)で潜在的な不満・不便を早期発見
- 不満の多い商品・導線・FAQを改善
- 顧客とのタッチポイントを最適化し、トラブル発生リスクを低減
結果として、「怒られる前に改善する」文化が社内に定着し、オペレーターも顧客もストレスの少ない応対環境が実現します。
生成AIによる要約・回答支援・多言語対応の発展可能性
生成AI(Generative AI)の導入は、オペレーター支援をさらに次のステージへ導きます。
【主な進化領域】
| 領域 | 内容 | 効果 |
| 要約 | 通話・チャット内容を自動要約 | 応対記録の省力化・ナレッジ共有促進 |
| 回答支援 | 複雑な質問に対する回答案の自動生成 | 対応スピード・品質の均一化 |
| 多言語対応 | リアルタイム翻訳・通訳サポート | グローバル顧客への対応力向上 |
【導入による主なメリット】
- オペレーターの経験に関わらず、均一な品質を実現
- 多文化・多言語環境でもスムーズな応対が可能
- 企業全体のサービスレベルを底上げ
これらの効果により、顧客対応の属人化を防ぎ、どのチャネルでも一貫した高品質なCX(カスタマーエクスペリエンス)を提供できるようになります。
まとめ
カスハラ対策は、コンタクトセンターの持続的な運営と、従業員のメンタルヘルスを守る上で不可欠な経営戦略です。
AIソリューションは、従来の対策の限界を打ち破り、経費削減と安心・安全な職場づくりの両立を可能にします。
成功事例に学び、自社の課題(コスト、人材、品質)に最も効果的なソリューションを見極めることが重要です。AIを活用し、安心・安全な職場づくりを実現することで、結果として顧客体験(CX)向上と経営効率化という二つの目標を達成できるのです。
私たちはSprinklrの提供だけでなく、導入前のご相談から、運用設計、現場に寄り添ったカスタマイズまで、柔軟にサポートいたします。
「もっと良い応対をめざしたい」「現場の負担を減らしながら品質を高めたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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