AIで変わるコンタクトセンター運営|品質を守りながら経費を削減する成功事例
2025.11.12
ブログ深刻化する人手不足や人件費の高騰、オペレーターの離職率上昇など、多くのコンタクトセンターが共通して抱える課題があります。従来の運営体制では、コストを抑えながら高品質な顧客対応を維持することが難しくなりつつあります。
こうした状況の中で注目されているのが「AIの活用」です。AIによる自動応答やデータ分析支援は、業務の効率化だけでなく、顧客満足度の向上にもつながる新たな手段として期待されています。
本記事では、なぜ今コンタクトセンターにAIが必要なのかを整理しながら、AI導入によって品質と効率を両立し、経費を削減する成功事例を紹介します。AI活用の実践的なポイントを通じて、次世代のセンター運営を実現するヒントをお届けします。
-NEWS-
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目次
コンタクトセンターが直面している課題

コンタクトセンターが抱える課題は複雑に絡み合っていますが、ここでは特に深刻な3つの問題を取り上げます。
①人件費の増加と採用難
コンタクトセンター運営の中心となるのは人材ですが、その確保と維持にかかるコストが年々増加しています。
- オペレーター採用コストの上昇:専門知識や高いコミュニケーションスキルを持つ人材を確保するため、求人広告費や人材紹介手数料などの採用コストが高騰しています。
- 教育・研修コストの負担:新人オペレーターを業務に対応できるレベルまで育成するには、数ヶ月に及ぶ時間と人件費を含めた教育コストが発生します。離職率が高い場合、その投資が無駄になるリスクも大きくなります。
②品質と効率のトレードオフ
従来のコンタクトセンター運営では、「応対品質」と「経費削減」は両立が難しい、いわゆるトレードオフの関係にありました。
- 応対品質を上げれば人材コストが増える:顧客一人あたりの応対時間を長く確保したり、経験豊富なベテランスタッフを配置したりすることで、必然的に人件費が上昇します。
- 経費削減を優先すると顧客満足度が低下:応答率向上を目的に短時間対応を求めすぎたり、十分な教育を受けていないオペレーターが増えたりすると、結果として顧客満足度(Customer Satisfaction:CS)が低下します。
③クレーム・カスハラ対応の増加
近年、顧客からの厳しいクレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)の増加が深刻化しています。
- 精神的負担の増大による離職率の上昇:頻繁なクレーム対応はオペレーターの精神的負担を著しく高め、ストレスによる欠勤や離職を招きます。その結果、人員不足がさらに深刻化するという悪循環が生まれています。
- オペレーターごとの応対品質のばらつきによる顧客満足度の低下:クレーム対応の経験やスキルはオペレーターによって大きく異なるため、応対品質に差が生じやすく、結果として顧客満足度や企業の信頼性を損なう恐れがあります。
AI導入で実現できる効果とは?
AIを導入することで、前述の課題を一気に解決し、品質維持とコスト削減の目標を達成することが可能になります。
①応対の標準化と品質維持
| AI機能 | 効果 |
| 音声認識+感情解析によるリアルタイム支援 | AIがオペレーターのトーク内容や顧客の感情をリアルタイムで解析し、次に話すべき内容や関連するFAQを自動表示。これにより、誰でも一定水準の応対品質を維持でき、新人でもベテラン並みのスムーズな対応が可能になります。 |
| FAQ自動応答による回答の一貫性 | AIチャットボットが一次対応を担うことで、常に最新で一貫した正確な情報を提供。人による回答ミスを防ぎ、顧客満足度の向上につながります。 |
②コスト削減
- チャットボット・自動音声で一次対応の自動化:定型的な問い合わせや、FAQで解決できる簡単な内容はAIが24時間365日対応。人件費をかけずに応答率100%を実現し、人手による入電数を大幅に削減します。
- 単純作業の自動化による人材の最適配置:応対履歴の入力やデータ整理などの事務作業をAIが自動処理。オペレーターは高度な判断や共感力を求められる応対業務に集中でき、生産性が向上します。
③オペレーターの負担軽減
- NGワード・カスハラ発話の自動検知と早期対応:AIが顧客の発言を解析し、暴言や過度な要求を即座に検知。管理者へ自動通知することで迅速なエスカレーションが可能となり、オペレーターの精神的負担を大幅に軽減します。
- AIアシスタントによる検索時間短縮:問い合わせ内容に応じて、過去のナレッジ・マニュアル・システム情報をAIが瞬時に検索・提示。保留時間や検索時間を削減し、スピーディーで的確な応対を実現します。
④データ活用による継続的改善
- VOC分析(顧客の声データ蓄積と可視化):全ての通話内容をテキストデータとして蓄積し、AIが自動で内容を分類・分析。「顧客の声(VOC)」を経営や商品開発に活かせます。
- AIによるトレンド検出・教育改善に反映:問い合わせ内容の傾向や不満点をAIが自動で抽出。その結果をもとに研修内容やFAQを更新することで、問い合わせ発生自体を減らす持続的な改善サイクルを構築します。
業界別にみるAI活用の成功パターン

ここでは、AIを導入し、品質維持とコスト削減を両立したケーススタディを業界別にご紹介します。
①金融業界の事例
- 導入サービス:AIチャットボット、FAQ自動応答
- 課題:新商品の情報解禁時に入電が集中し、応答率が低下。人件費を増やさずに対応力を強化する必要があった。
- 成功パターン:WebサイトにAIチャットボットを導入し、口座開設手続きや金利に関する定型的な問い合わせの一次対応を自動化。その結果、コンタクトセンターへの入電数を20%削減しながら、顧客がすぐに情報を得られる環境を整備し、品質を維持したまま応答率を改善しました。
②通信業界の事例
- 導入サービス:リアルタイム感情解析AI、オペレーター支援ツール
- 課題:サービス解約時のクレーム対応の難易度が高く、処理時間が長期化。対応後のオペレーターのメンタルケアも課題だった。
- 成功パターン:感情解析AIで顧客の声のトーンや発話を分析し、怒りの兆候をリアルタイムでオペレーターに警告。同時に、AIが過去の成功事例に基づいた「切り返しトーク」や解決策を提示する支援機能を提供。これにより、クレームの一次解決率が15%向上し、オペレーターの精神的負担が軽減したことで、離職率が前年比10%改善しました。
③EC業界の事例
- 導入サービス: FAQ自動応答チャット、有人チャット連携
- 課題:商品のサイズや配送状況に関する簡単な問い合わせが多く、夜間や休日も対応が求められ、人件費が膨大になっていた。
- 成功パターン: AIによるFAQ自動応答チャットを優先窓口として導入。解決できない複雑な問い合わせのみを営業時間内に有人チャットへ連携するハイブリッド運用を開始。これにより、夜間の人的コストをゼロにしながら、応答時間の短縮を実現。顧客は待つことなく迅速に情報を得られるようになり、顧客満足度スコアが上昇しました。
「品質」と「コスト削減」を両立するAI活用のポイント
AIを成功させるためには、ツール導入だけでなく、運用戦略が不可欠です。
①部分導入から始める
AI導入は、最初から全ての業務を自動化しようとせず、限定された領域でスモールスタートを切るのが鉄則です。
| おすすめの部分導入領域 | 期待される効果 |
| 通話録音データのAI解析 | 導入コストが低く、現状の課題(問い合わせ傾向、対応時間)を明確に把握できる。 |
| チャットボット | 定型的な一次対応を担わせることで、すぐに人件費削減効果が見えやすい。 |
| オペレーターのリアルタイム支援 | 新人の応対品質向上に直結し、教育コスト削減につながる。 |
②人とAIの役割分担
AI導入の目的は、人を排除することではなく、人がより人らしく、付加価値の高い業務に集中できる環境を作ることです。
- AIの役割: 一次対応、情報検索、データ分析、感情解析といった「迅速性・正確性・定型性」が求められるタスク。
- 人間の役割:高度な判断、共感や傾聴、複雑な交渉、顧客の感情に寄り添う人間性が求められるタスク。
③継続的な改善体制
AIは導入して終わりではありません。継続的なチューニングが効果を最大化させます。
- AI導入後の効果測定:AIが対応した入電数、解決率、顧客満足度の変化を定期的に測定します。
- VOCフィードバックを研修やシステムに反映:AIが収集・分析したVOCから、顧客が最も不満を感じているポイントを特定。その内容をFAQの修正、AIの回答精度の向上、そしてオペレーターの研修内容にフィードバックすることで、問い合わせ自体を減らすサイクルを確立します。
導入のステップ
AI導入を成功させ、成果を最大化するためには、段階的かつ計画的なステップを踏むことが不可欠です。AI導入を成功に導くためのステップを以下で整理します。
ステップ1:課題整理(コスト/品質/人材課題の優先度確認)
AI導入の前に、まずは現状の課題を数値で明確に整理しましょう。
| 課題項目 | 確認すべきKPIの例 | 優先度確認の目的 |
| コスト | 平均処理時間(AHT)、人件費 | どこで費用対効果を出すかを明確にする。 |
| 品質 | 顧客満足度(CSAT)、解決率 | AI導入で低下させないための基準を設定する。 |
| 人材 | 離職率、研修期間 | 負担軽減と効率化によって、人材定着を目指す。 |
この段階で「AIで何を達成したいか」という具体的な目標(KPI)を設定することが、その後の成功を左右します。
例えば、「応答率を5%改善する」「後処理時間を30秒短縮する」など、定量的かつ達成可能な目標を設定しましょう。
ステップ2:小規模導入(録音データ解析やチャットボットから)
課題が整理できたら、次はリスクの低い領域でスモールスタートを切ります。最初から全業務にAIを導入しようとすると、コストやシステムの複雑性が増し、失敗のリスクが高まります。
初期段階で推奨される導入領域は以下の通りです。
- 通話録音データのAI解析:既存のデータから問い合わせ傾向やオペレーターの課題を抽出します。
- チャットボットの導入:定型的な問い合わせ対応をAIに任せ、すぐに人件費削減効果を確認します。
これにより、現場の負担を抑えつつ、AIの効果と課題を検証し、本格導入に向けた知見を効率的に蓄積することができます。
ステップ3:統合運用(通話録音×音声認識×感情解析の組み合わせ)
小規模導入で一定の成果が出たら、複数のAI機能を連携させ、統合的な運用に移行します。
| 連携させるAI機能 | 統合運用による効果 |
| 通話録音 + 音声認識 | 全ての通話をリアルタイムでテキスト化し、情報の検索時間を短縮。 |
| 感情解析 + リアルタイム支援 | 顧客の怒りなどの感情を検知し、オペレーターに適切なトークやFAQを瞬時に提示。 |
この統合により、応対品質が標準化され、保留時間や検索時間が短縮されます。AIが持つデータ分析能力を最大限に活かし、人による判断を支援する体制を構築しましょう。
ステップ4:全社展開&継続的チューニング
統合運用が軌道に乗ったら、成功事例を基に全社展開します。AI導入はシステムを入れること自体が目的ではなく、効果を持続させることが最も重要です。
- 全社展開:成功した運用モデルを全拠点・全チャネルに適用し、効果を最大化。
- 継続的チューニング:AIが収集・分析した顧客の声(VOC)を定期的にチェックし、AIの回答精度やFAQ内容を改善していく体制を確立します。
このフィードバックループを確立することで、AIは進化し続け、コンタクトセンター全体の生産性と顧客満足度を向上させることができます。
まとめ
AIは、コンタクトセンターが抱える「品質を維持しながら経費を削減する」という長年の課題を解決へ導く、強力なツールです。
AIチャットボットや自動音声対応によるコスト削減、リアルタイム支援による品質の均一化など、AIは人材不足時代のコンタクトセンター運営に欠かせない存在となっています。
成功のカギは、小規模から導入し、人とAIの役割を明確にしながら、継続的に改善を重ねていくことにあります。
ぜひ本記事を参考に、AIと共に貴社のコンタクトセンター運営の新たな未来を切り開いてください。
弊社では、システム提供だけでなく、導入後の活用支援や改善サポートまで一貫して行っております。お気軽にご相談ください。
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