カスハラに配慮した言葉選びとは?コンタクトセンターで好印象を与える言葉遣いとNGワード改善例

2025.05.23
ブログコンタクトセンターでの言葉遣いは、単なるマナーを超えて、顧客との関係性を築く「信頼の橋渡し」となります。
特に近年では、応対品質に対する期待が高まる一方で、言葉の選び方ひとつがクレームやカスハラの引き金になるケースも増えています。
本記事では、現場のオペレーターが日々直面する「言いにくい」「伝わりにくい」場面に焦点を当てながら、NGワードの具体例と、それを回避しながら好印象を与える言い回しの工夫をご紹介します。
お客さまに寄り添いつつ、自分自身を守るためにも、言葉の力を再確認してみませんか?
1,はじめに
コンタクトセンターの応対は、企業の第一印象を決定づける「声の窓口」です。
電話越しのわずか数秒で、オペレーターの声のトーンや言葉遣いから、顧客は企業そのものの姿勢を感じ取ります。
明るく丁寧な言葉は、信頼や安心感につながり、対応がスムーズに進むきっかけにもなります。
一方で、何気ない一言が誤解を招いたり、顧客の感情を逆なですることもあり、それがクレームやカスハラに発展するリスクも否めません。
現場で働くオペレーターにとって、「適切な言葉の選択」は、顧客満足だけでなく自身を守るセルフディフェンスの手段でもあります。
本稿では、応対時によく使われがちなNGワードと、それを避けつつ印象を損なわない表現の工夫を具体的にご紹介します。
コンタクトセンターでの応対力を高め、より安心・安全な顧客対応の実現に向けた参考となれば幸いです。
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2,NGワードとそのリスク

コンタクトセンターの一言は、企業の信頼を左右する“見えない名刺”。たった一度のNGワードが、顧客の心を遠ざけ、クレームやブランドイメージ低下という大きなリスクを呼び込みます。だからこそ、言葉選びには最大限の注意が求められるのです。
顧客に不快感を与えるNGワード例
以下のようなワードは顧客の信頼を損ねるリスクがあるため、注意が必要です。
- 「もしもし」――カジュアルすぎてビジネスには不適切。
- 「できません」「無理です」――顧客を突き放す印象を与える。
- 「~しておきます」――後回しや消極的な印象を与える。
- 「下のお名前」――上下関係を感じさせ、配慮に欠ける。
- 「お電話をお回しします」――“たらい回し”を連想させる。
- 「なるほど」――軽い相槌に聞こえ、丁寧さが不足。
- 「~になります」――曖昧で責任感が伝わりにくい。
無意識に使ってしまう表現の見直し
無意識に口にする言葉こそ、顧客体験を左右する落とし穴となります。慣れた表現や曖昧なフレーズは、信頼感や丁寧さを損なう原因になるため注意が必要です。
自分の言葉遣いを定期的に見直し、意識的に磨き上げることで、プロフェッショナルな応対が自然と身につきます。
3,好印象を与える言葉遣いの基本ルール

コンタクトセンターでは、声や言葉遣いひとつで顧客の印象が決まります。正しい敬語やポジティブ表現への言い換えなど、基本ルールを押さえることで、電話越しでも信頼と安心を届けることができます。
丁寧語・尊敬語・謙譲語の正しい使い分け
種類 | 使い方の対象 | 例(「言う」) | 例(「行く」) | 例(「いる」) |
丁寧語 | 誰に対しても丁寧に | 言います | 行きます | います |
尊敬語 | 相手・目上の人 | おっしゃる | いらっしゃる | いらっしゃる |
謙譲語 | 自分・自分側 | 申します/申し上げる | 参ります/伺います | おります |
丁寧語は「です」「ます」など、会話全体を丁寧にする基本の敬語です。
尊敬語は相手や目上の人の動作に使い、相手を立てる表現。謙譲語は自分や自分側の動作に使い、自分をへりくだって相手への敬意を示します。
これら使い分けを意識することで、好印象で信頼される応対ができます。
ポジティブ表現への言い換え
コンタクトセンターで好印象を与えるためには、否定的・消極的な表現をポジティブな言い回しに言い換えることが重要です。
「できません」「わかりません」などの直接的な否定は避けましょう。
「現時点では対応が難しいですが、別の方法をご提案いたします」「確認いたしますので、少々お待ちください」といった前向きな表現に置き換えることで、顧客への配慮や誠実さが伝わります。
また、クッション言葉や代替案の提示を組み合わせることで、顧客に安心感と信頼感を与える応対が実現できます。
4,ケース別・言い換え例
コンタクトセンターでは、状況や顧客の感情に応じた適切な言い換えが信頼構築の鍵となります。
ケース別の具体例を通じて、ネガティブな表現をポジティブに変えるテクニックや、より丁寧で前向きな応対へと導く言葉選びのポイントをわかりやすく紹介します。
クレーム対応時
【NG例】 | 【ポジティブな言い換え例】 |
対応が遅れました | 確認に少々お時間をいただきました |
ミスがありました | 改善の余地がある点が見つかりました |
お手数をおかけします | ご協力いただきありがとうございます |
間違いでした | 新たな視点で見直すきっかけとなりました |
クレーム対応中です | ご要望への対応を進めております |
ご迷惑をおかけしました | ご指摘いただき、感謝します |
クレーム対応時は、ネガティブな言葉をそのまま伝えるのではなく、前向きな表現に言い換えることで顧客の印象が大きく変わります。
たとえば「ミスがありました」と伝えるより、「改善の余地がある点が見つかりました」と言い換えることで、誠実さや向上心が伝わりやすくなります。
また、「ご迷惑をおかけしました」も「ご指摘いただき、感謝します」とすることで、顧客の声を前向きに受け止めている姿勢を示せます。
こうした言い換えは、信頼回復や顧客満足度の向上に直結する重要なテクニックです。
案内・説明時
【NG例】 | 【ポジティブな言い換え例】 |
できません | 現時点では難しい状況ですが、別の方法をご案内いたします |
〜しかできません | 〜をご案内できますので、ご検討ください |
~は無理です | できる限りご要望に沿えるよう対応いたします |
〜してください | お手数ですが、〜をお願いできますでしょうか |
案内・説明時は、否定的な言い回しや一方的な指示を避け、前向きで丁寧な表現に言い換えることが大切です。
たとえば「できません」を「別の方法をご案内いたします」と伝えることで、顧客の不満を和らげ、安心感や信頼感を与えることができます。
丁寧な依頼や代替案の提示を心がけることで、より好印象なコミュニケーションが実現します。
質問対応時
【NG例】 | 【ポジティブな言い換え例】 |
わかりません | ただいま確認いたしますので、少々お待ちください |
できません | 現時点では難しい状況ですが、他の方法をご案内いたします |
担当者が不在です | 担当者が戻り次第、すぐにご連絡いたします |
規則なので無理です | 規則上難しいのですが、別のご提案が可能です |
少々お待ちください | 恐れ入りますが、少々お時間をいただけますでしょうか |
情報が足りません | お手数ですが、もう少し詳しくご状況をお聞かせいただけますか |
質問対応時は、否定的な表現やぶっきらぼうな言い方を避け、クッション言葉や前向きなフレーズを使うことで、顧客に安心感と信頼感を与えられます。
「わかりません」ではなく「確認いたします」と伝える、「できません」ではなく代替案を示すなど、丁寧で前向きな言い換えを心がけることが好印象につながります。
5,言葉遣いを定着させるトレーニング方法

コンタクトセンターでの言葉遣いを定着させるには、実践的なトレーニングが欠かせません。
具体的には、ロールプレイングとフィードバックの繰り返しや、定期的なモニタリングと改善が効果的です。
ロールプレイとフィードバック
ロールプレイは、実際の顧客対応を想定してオペレーター役と顧客役に分かれて練習する方法です。
スクリプト(会話の台本)を使い、声に出して繰り返し練習することで、自然な言葉遣いや応対スキルを身につけることができます。
ロールプレイ後は、良かった点と改善点について具体的なフィードバックを行います。フィードバックは一方的に指摘するのではなく、良い点を認めたうえで改善点を明確に伝えましょう。
スタッフ自身にも振り返りや今後の意識づけを促すことで、言葉遣いの定着とモチベーション向上につながります。
定期的なモニタリングと改善
定期的なモニタリングは、オペレーターの言葉遣いや応対品質をチェックし、課題を明確にするための重要なプロセスです。
録音やリアルタイムの会話をチェックシートで評価し、丁寧な言葉遣いやマナーが守られているかを確認しましょう。
その結果をもとに具体的なフィードバックを行い、個々の改善点を共有・指導することで、言葉遣いの定着と品質向上につなげます。
継続的なモニタリングと改善サイクルが、プロフェッショナルな応対力を育てます。
6,まとめ
言葉の力で、信頼されるセンターへ
コンタクトセンターにおける言葉遣いは、単なる接客マナーではなく、顧客との信頼関係を築くための重要なコミュニケーションツールです。
第一声の印象や言葉の選び方ひとつで、顧客満足度は大きく左右され、対応次第ではクレームやカスタマーハラスメントを未然に防ぐことも可能です。
本記事でご紹介したように、「できません」→「別の方法をご案内します」、「わかりません」→「確認いたします」といった前向きな言い換えやクッション言葉は、オペレーター自身を守るだけでなく、顧客に安心と信頼を届けるための基本です。
また、言葉遣いを定着させるためには、実践的なトレーニングと継続的なモニタリングが欠かせません。個人のスキルだけに任せるのではなく、組織として応対品質を育てていく姿勢が求められます。
私たちアルファコムでは、コンタクトセンターの現場に寄り添い、応対品質の向上、業務効率化、そしてカスハラ対策までを視野に入れたソリューションと運用支援体制をご提供しています。
導入前のご相談や、現場課題に応じた個別提案も柔軟に対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
