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コンタクトセンターに必要なカスタマーハラスメント対策とは?AI導入でできる新しい予防策

1, はじめに

近年、コンタクトセンター業務において深刻な問題となっている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。

CCAJからのガイドラインの公開や各自治体における条例の制定など各所における対応も開始しており、カスタマーハラスメントから従業員を守るために一日も早い取り組みが求められています。企業の姿勢を示すことでユーザの信頼を得るためにも今すぐ取り組むべき課題です。
本記事では、コンタクトセンターにおけるカスハラの現状と、AIチャットや通話録音を利用した効果的な対策について詳しく解説します。
安心して働ける環境づくりが今まさに求められています。ぜひ参考にしてください。

-NEWS-
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2, カスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義

カスタマーハラスメントは、CCAJ(一般社団法人日本コンタクトセンター協会)のガイドラインにおいて、以下のように定義されています。

「顧客等から従業員に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境や心身の健康、人としての尊厳を害するもの。」

【定義のポイント】
全てのクレームがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。
不当で悪質なクレームや言動がカスタマーハラスメントに該当します。
商品やサービスなどへの改善を求める正当なクレームはカスハラに含まれません。
まずは顧客の主張に関して事実関係を洗い出し、自社に過失がないか、根拠ある要求がなされているかを確認したうえで、顧客の主張が妥当であるかどうかを判断しましょう。

コンタクトセンター業務特有のリスクと課題

コンタクトセンターでカスハラが深刻化しやすい理由として、以下の事情が挙げられます。

①コンタクトセンター業務では、主に電話や文字といった単一表現が中心となります。このため視覚情報(表情・ジェスチャーなど)を用いることができず、非言語コミュニケーションの多くが制限され、状況説明や真意の把握が難解です。

②メールやチャットなど文字による顧客対応において、要望や要求の特定に複数回のやり取りが生じる場合、顧客の不満を助長しカスハラ発生の一因となり得ます。

③非対面であることから、本人確認のため一定の手順が生じるため、顧客が望む情報をすぐに提供できない場合があります。また、家族や代理人からの問い合わせには原則対応できない点も、顧客側にとって不満につながりやすいです。

④電話においては、原則従業員と顧客が1対1での対応となり、クレームに対して複数名で対応できない場合がある点も、コンタクトセンターでカスハラが発生しやすい理由の一つです。

3, コンタクトセンターで増加するカスタマーハラスメントの実態

暴言、理不尽な要求、AIチャットへの過度なクレーム事例

CCAJガイドラインにおけるカスハラの「暴言」「理不尽な要求」「AIチャットへの過度なクレーム」の事例は以下の通りです。

【暴言の事例】
・「バカ」「親の顔が見たい」など従業員の人格否定や侮辱する発言
・「女性は応対者として相応しくない」「どうせ○○人だろう」など差別的な発言
・「そっちに行ってやる」「反社会的な勢力とつながりがある」などの威嚇・脅迫
・「録音しているので SNS に晒す」「名前をネットにばらまく」など暴露をほのめかす
・性的な冗談やからかい、デートへの誘い、個人的な性的体験談を話すなどのセクハラ行為

【理不尽な要求の事例】
・支払った対価と比較して高額な賠償を要求
・問題がなかった使用済み商品の返金・交換を要求
・問題が解決しても電話を切らせない長時間拘束の要求
・従業員の個人情報・プライバシー情報の開示要求
・訪問や来社、土下座といった過度な謝罪の要求
・退職や異動など、企業が対応できない個人への要求

【AIチャットへの過度なクレーム事例】
・AIチャットや自動応答システムに対し、何度も同じ要求や罵倒を行う
・AIチャットの回答内容に納得できず、執拗に人間オペレーターへの切り替えを要求
・AIチャットの限界を理解せず、過剰な謝罪や補償を求める

AIチャット普及による新たなカスハラ傾向

CCAJのカスハラ対策ガイドラインでは、AIチャットの普及により、従来の電話や有人チャット対応とは異なる新たなカスハラ傾向が現れていることが指摘されています。

【新たなカスハラ傾向の主な特徴】

①AIチャットへの過剰な要求
AIだからといって「何を言ってもいい」と考える利用者もおり、AIチャット上での暴言や不適切な要求が問題化しています。

②AIの限界を逆手に取ったハラスメント
AIチャットの対応範囲の限界を逆手に取り、AIが対応できない内容で執拗に問い詰めるといった、AIの弱点を利用したカスハラのパターンが見られます。

③匿名性・非対面性による攻撃性の増加
チャットは電話や対面よりも匿名性が高く、顧客が過激な言動を取りやすい環境となるため、AIチャットを介したハラスメントがエスカレートしやすい傾向があります。

④AIチャットから有人対応への切り替え時の問題
AI対応に不満を持った顧客が、より強い不満や怒りを抱えて有人対応に移るため、従業員への精神的負担が増大する傾向にあります。

4, カスタマーハラスメントがもたらす影響

オペレーターとAIチャットサポート担当者への心理的負担

カスハラは、コンタクトセンターのオペレーターに対して深刻な心理的負担をもたらします。

CCAJの調査によると、実際にカスハラを受けた際、約6割のオペレーターが「強いストレスを感じた」と回答し、軽いストレスを含めると約9割が心理的な影響を受けていることが調査で示されています。

さらに、2%の従業員は精神疾患になった経験があると報告されています。

スタッフの離職、業務効率低下、企業イメージへの悪影響

CCAJのガイドラインや関連資料によると、カスハラがもたらす主な悪影響は以下の通りです。

【スタッフの離職】
カスハラによる強いストレスや精神的負担は、スタッフのモチベーション低下や健康不良を引き起こし、結果として休職や離職につながるケースが多く報告されています。

【業務効率の低下】
長時間の対応や繰り返しの要求などにより、業務時間が削られ、他の業務や顧客対応に支障が出るため、全体の業務効率が低下します。

【企業イメージへの悪影響】
カスハラが放置されると、SNSや口コミサイトなどで悪評が拡散し、企業イメージの低下や既存顧客の離反につながるリスクがあります。

参考:CCAJ(一般社団法人日本コンタクトセンター協会)
「コールセンターにおけるカスタマーハラスメントに関するアンケート調査」

5, コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント対策

対応マニュアルとエスカレーションルールの整備

CCAJのガイドラインでは、カスタマーハラスメント対策として「対応マニュアルの整備」が推奨されており、これがコンタクトセンター現場の実効的な対策の柱となります。

まずは、カスハラと通常のクレームの違いを明確に定義し、どのような言動がカスハラに該当するか具体例を示しましょう。(例:1時間以上の長時間拘束、3回以上の理不尽な要求など)

そのうえで、コンタクトセンターで可能な対処法をマニュアルに例示します。

【コンタクトセンターにおけるカスハラ対策例】
・時間拘束型:事前に応対可能時間を伝達し、膠着状態が一定時間経過後は通話終了
・リピート型:連絡先を記録し、3回以上の不当要求時は窓口一本化や対応拒否を宣言
・暴言型:録音を実施し「発言を控えてください」と警告、悪質時は警察相談を検討
・威嚇型:直ちに上長へ引き継ぎ、法的措置の可能性を顧客に通告

カスハラが発生した場合、オペレーターが一人で抱え込まず、すぐに上司や専門部署へエスカレーションできる体制を整えるのも重要なポイントです。

AIチャットによる一次対応の自動化と負担軽減

業界全体の動向として、AIを組み合わせたオペレーターの負担軽減策も進行中です。

AIチャットボットや自動応答システムが、よくある問い合わせやクレームの初期対応を24時間自動で行うことで、オペレーターが直接カスハラ顧客に接する機会を減らせます。

また、AIは会話内容やトーンをリアルタイムで分析し、不適切な発言やカスハラの兆候を検知できます。

問題がある場合は自動的に上司や専門部署へエスカレーションできるため、現場スタッフが一人で抱え込むリスクを減らせるのも、AIチャット導入の大きなメリットです。

録音・ログ保存による証拠確保とリスク回避

カスハラ対策において、録音やログ保存は「証拠確保」と「リスク回避」の観点から重要な手段とされています。

録音やログ保存によって、顧客とのやり取りを客観的に記録することで、ハラスメント行為があった場合に事実関係を明確化できます。

記録は従業員を守るだけでなく、万が一訴訟やトラブルに発展した際の証拠としても活用可能です。

録音している旨を顧客に通知することで、未然にハラスメント行為を抑止する効果も期待できます。

6, AIチャット導入によるカスタマーハラスメント防止のメリット

感情に左右されない公平な対応

AIは人間と異なり、顧客の感情的な言動や威圧的な態度に影響されず、常に冷静かつ客観的に対応可能です。

これにより、オペレーターごとに対応のばらつきが生まれるリスクを減らし、顧客にも公平なサービスを提供でき、カスハラ防止につながります。

過度なクレームをフィルタリングし、オペレーターへの影響を最小化

過度なクレームのフィルタリングによって、オペレーターへの影響を最小化できるのも、AIチャットを導入するメリットのひとつです。

AIは、自然言語処理(NLP)技術で攻撃的発言(「バカ」「役立たず」など)を検知し、リアルタイムでフラグを立てます。

音声通話では、感情分析技術を活用し、声のトーンや話し方から怒りの度合いを判定します。

カスハラの兆候を早期に察知できるこれらのAI技術を活用すれば、問題がエスカレートする前にフィルタリング可能で、オペレーターが精神的ストレスを受けるリスクを軽減できます。

異常なユーザー行動を検知してSVなどにエスカレーションできる

AIは、チャットや音声通話の内容をリアルタイムで解析し、攻撃的な言葉や不適切なトーン、過度な要求などを検出できます。

異常なユーザー行動やカスハラの兆候が検知されると、AIが自動的にアラートを発し、SVや管理者にエスカレーションする仕組みが実装可能です。

AIによる客観的な分析により、エスカレーションすべきケースを漏れなく抽出し、逆に不要なエスカレーションを減らすことができます。

カスハラ対応のデータ蓄積とナレッジ活用

AIチャットはカスハラ対応のデータを自動的に蓄積し、ナレッジ活用が実現できる点も注目ポイントです。

AIは顧客とのやり取りを自動でテキスト化し、重要なポイントを要約・保存できます。このデータは、組織内での情報共有や新人教育など、多目的に利用可能です。

また、AIが過去の対応事例をナレッジベース化することで、同様のケース発生時に迅速な参考情報として活用でき、組織全体の対応力の底上げが期待できます。

7, 法的観点と企業の責任

企業には法律によって雇用管理上の「安全配慮義務」があり、従業員の心身の安全を確保する義務を負います。

カスハラ対策を怠り従業員が被害を受けた場合、企業は損害賠償責任を問われるため、法的リスクの備えも不可欠です。

カスハラ行為は、内容によっては刑法(脅迫罪、名誉毀損罪、威力業務妨害罪など)や民法(不法行為による損害賠償請求)に該当します。

顧客の違法行為が認められる場合、警察への通報や法的措置を検討する基準を明確にし、顧問弁護士との連携体制を整えておくことが重要です。

参考:厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

8, まとめ

コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント問題は、もはや無視できない深刻なリスクとなっています。

スタッフの心理的負担を軽減し、離職率を下げ、業務効率を高めるためには、「対応マニュアルの整備」や「エスカレーションルールの徹底」はもちろん、AIチャットやAIモニタリングなど最新技術を上手に取り入れながら、「従業員を守る仕組み」を作ることは、結果的に「顧客満足度の向上」や「企業イメージの向上」にもつながります。

カスタマーハラスメントに負けない強い組織をつくるためには、AIの力を積極的に活用することが、これからの必須対策となります。ぜひ早期に対策を検討し、実行へと移していきましょう。

弊社では、チャットボットカスハラ対策ソリューションの提供だけではなく、導入前のコンサルティングや運用のご相談も幅広くお受けしております。ご興味のある方は是非お問い合わせ下さい。