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カスタマーハラスメント対策の最新動向|コンタクトセンターが取るべき実務対応と仕組みづくり

はじめに|なぜ今、カスタマーハラスメント対策が重要なのか

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、コンタクトセンターの現場課題にとどまらず、企業全体のリスク管理上も重要なテーマとなっています。

近年、顧客接点のデジタル化やSNSの普及により、応対内容が外部に可視化・拡散されるリスクが増大しました。

加えて、顧客の期待値の上昇が現場スタッフへの負荷をさらに高め、結果として離職率や欠勤率の増加、精神的ストレスの蓄積が組織運営に影響を及ぼしています。

このような状況下で、従来の経験則や個人裁量に頼った対応だけでは限界があり、組織としての統一的な対策が不可欠です。

そこで本稿では、コンタクトセンターが取るべき実務対応と仕組みづくりの最新動向を整理し、早期検知、標準対応、再発防止を組織全体で実現するための指針を提示します。

目次

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カスタマーハラスメント対策の最新動向

カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応は、もはやコンタクトセンターの現場課題にとどまらず、企業全体のリスク管理に直結する重要な経営テーマとなっています。

適切な対策を講じるためには、社会的な潮流やカスハラの性質がどのように変化しているのかを正しく把握することが不可欠です。

本章では、法制度の整備、デジタル環境の変化、先進企業の取り組みという三つの観点から、最新動向を整理します。

① 法制度・ガイドラインの整備

2022年、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しました。これにより、カスハラ対策は従来の努力義務から、実質的に企業の安全配慮義務の一部として位置づけられています。

従業員を顧客の暴言や暴力から守る体制が不十分な場合、労働契約法に基づく安全配慮義務違反を問われるリスクが高まります。

さらに近年では、カスハラ防止条例の制定に動く自治体も増えており、企業にはコンプライアンスの観点から、明確な判断基準や対応方針の整備が不可欠となっています。

② デジタルチャネルの多様化とカスハラの変容

SNS・チャット・メールといったデジタルチャネルの普及により、カスタマーハラスメントの形態は大きく変化しています。

対面や電話が中心だった従来と異なり、テキストベースでの誹謗中傷や執拗なクレームが増加している点が特徴です。

匿名性の高い環境では相手の反応が見えにくく、攻撃性が助長されやすいため、人格否定や威圧的な表現がエスカレートする傾向があります。

また、SNS上の投稿には拡散リスクが伴い、事実と異なる情報や一方的な主張が瞬時に広まる可能性も否定できません。

こうしたデジタル時代特有のカスハラは、従業員の心理的負担を増大させており、企業には従来とは異なる視点での対応方針が求められています。

③ 企業事例に見る先進的な取り組み

先進企業では、「守りのDX」ともいえる形で、テクノロジーと制度を組み合わせた対策が進んでいます。

  • 複数チャネル横断の対応体制
    電話・メール・チャットなど、全チャネルで要注意顧客情報を共有するデータベースを構築。
  • 組織的な判断基準の明確化
    「このラインを超えた場合は対応を打ち切る」といった基準を、経営層主導で策定・公表。
  • データ活用による予兆検知
    過去の応対ログをAIに学習させ、トラブル化の兆候がある通話をリアルタイムで検知し、SVへアラートを送信。

これらの取り組みは、従業員を守るだけでなく、企業全体のリスク低減にも寄与しています。

カスタマーハラスメントがもたらすリスク

カスタマーハラスメント(カスハラ)を放置すると、現場だけでなく企業経営全体にも影響を及ぼす重大なリスクです。

ここでは、オペレーター、コンタクトセンター運営、企業全体への影響を整理します。

① 現場オペレーターへの影響

カスハラは現場オペレーターに大きな心理的負担を与えます。暴言や執拗な要求が続くとストレスや不安が高まり、業務への集中力が低下しやすくなります。

欠勤や休職、離職意向の増加も珍しくありません。人員の入れ替わりが続くと、経験やノウハウが蓄積されず、チーム全体の対応力も弱まります。

精神的余裕を失った応対は判断ミスや品質低下を招き、オペレーター自身の自信や評価にも影響します。こうした状況は、現場の安定運営に大きな影響を与えるリスクです。

② コンタクトセンター運営への影響

対応が難しい案件が増えると、オペレーターごとの判断に差が出やすく、応対品質にばらつきが生まれます。顧客対応の一貫性が保ちにくくなり、クレームの再発や対応の長期化も起きやすくなります。

さらに、エスカレーション対応に追われることで、管理者やSVの負担が増えます。人材育成や業務改善に十分な時間を割けなくなる点も課題です。

特定担当者への対応偏りは業務の属人化を招き、組織全体の再現性や持続性も損なわれます。

③ 企業全体への影響

カスハラは企業全体の価値にも影響します。対応の不備や判断のばらつきは顧客の不信感を招き、ブランド評価を下げる要因です。

SNS時代では、応対の一部が切り取られて拡散され、炎上や風評被害につながるリスクもあります。こうした事態は、企業イメージの回復に時間やコストを要します。

加えて、現場の混乱や従業員の疲弊は応対品質を低下させ、顧客体験(CX)全体にも影響します。カスハラ対策は、ブランド価値とCXを守る上で重要な経営課題です。

クレームとカスハラの見極め基準

カスハラ対策の第一歩は、「正当なクレーム」と「悪質なカスハラ」を明確に区別することです。

線引きが曖昧だと、現場スタッフは萎縮し、正当な指摘や改善要望まで拒絶してしまう可能性があります。

① 判断の基本軸

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」でも示されている通り、カスハラと正当なクレームを区別するには、以下の3つの視点を総合的に評価することが推奨されています。

  • 要望の正当性
    顧客の要求に事実や法的根拠があるか、企業の対応不足に見合った内容かを確認します。
  • 対応範囲の妥当性
    要求手段や態様が社会通念上妥当かを判断します。過剰な要求や非常識な対応を強いる場合は、カスハラの可能性が高くなります。
  • 感情表現の度合い
    怒りや不満の表現が、暴力・脅迫・侮辱など個人の尊厳を侵害する攻撃に当たらないかを見極めます。

これらの軸を組み合わせることで、単なる「不機嫌な顧客」と「悪質なハラスメント」を客観的に区別でき、現場の判断負荷を軽減できます。

② ケース別の境界線

現場で迷いなく判断できるよう、代表的なケースを整理し、「正当なクレーム」と「カスハラ」を具体的に切り分けて捉えることが重要です。

【正当なクレーム例】

  • 商品不具合に対する交換や返品の要求
  • オペレーターの明らかな案内ミスに対する謝罪要求

いずれも顧客の声(VOC:Voice of Customer)として価値があり、組織として真摯に対応すべきです。これらを分析・活用することで、商品やサービスの改善につなげられます。

【不当要求・威圧的言動】

  • 「土下座しろ」「家に来い」といった強要
  • 規定外の金品要求
  • 人格を否定する暴言や侮辱

これらは明らかに正当な要求の範囲を超えており、現場スタッフの心理的負担を高めます。早期にカスハラとして認定し、対応を切り替えることが重要です。

【長時間拘束・人格攻撃】

  • 同じ要求を何時間も繰り返す
  • 連日数百回の架電
  • 性的嫌がらせ発言や嫌がらせメール

こうした行為は、通常のクレーム対応フローでは対処が困難です。社内の別プロセスで対応し、記録を残すことが推奨されます。

③ 現場判断基準の明文化

オペレーターが安心して対応するためには、判断を個人の感覚に任せず、組織として明確な基準を設けることが重要です。

誰が見ても「これはハラスメント」と分かる判断の目安を整理し、応対マニュアルやフローチャートとして明文化すると現場は迷わず行動できます。

例えば、以下の行為が基準になります。

  • 大声を張り上げる
  • 同じ質問や要求を3回以上繰り返す
  • 「死ね」「バカ」などのNGワードを使用する

さらに、行動と判断基準をルールとして紐づけておくことも有効です。

  • 一定以上の暴言・威圧的発言が続いた場合
    → SV(スーパーバイザー)へ対応を引き継ぐ
  • 特定のNGワードが発せられた場合
    → 事前手順に従い通話を終了する

このように明確なルールがあることで、オペレーターは迷わず対応でき、心理的負担を軽減できます。応対品質の安定・維持にもつながる重要な取り組みです。

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実務対応の基本設計

判断基準を明文化した後は、現場で確実に運用できるよう実務フローを設計することが重要です。

ここでは、カスタマーハラスメント対応を前提とした基本的な設計要素を整理します。

① 初動対応フローの標準化

カスタマーハラスメントは、初期対応の段階で対応を誤ると、状況が悪化しやすいという特徴があります。

そのため、受付段階ではオペレーター個人の裁量に任せず、事実確認に徹するための行動を標準化します。

【初動対応で統一すべきポイント】

項目内容
ヒアリング姿勢お客様の発言を遮らず、まずは傾聴する
記録方法事実と感情を切り分けて記録する
教育内容感情的反応を避ける対応方法を事前に教育
抑止策「通話は品質向上のため録音されています」というアナウンスを必須化

これにより、初動段階での感情的な衝突を防ぎ、後続対応の判断材料を正確に残すことができます。

② エスカレーション設計

オペレーターが一人で問題を抱え込まないよう、介入タイミングを明確にしたエスカレーション設計が必要です。

【エスカレーション設計の例】

介入の目安対応内容
対応時間が20分を超えた場合SVがモニタリングに入る
NGワードが使われた場合即座にSVへ交代
状況が改善しない場合専門部署へ引き継ぎ

さらに、SVでも解決が難しい場合に備え、法務部門やお客様相談室など専門部署への引き継ぎルートを事前に定義しておくことで、対応の属人化を防ぐことができます。

③ 現場支援体制の構築

SVやリーダーは常に現場状況を把握する必要がありますが、すべての応対をリアルタイムで直接確認することは現実的ではありません。

そのため、オペレーターが必要なタイミングで即座に支援を受けられる仕組みを整えることが重要です。

【有効な現場支援施策】

  • チャットツールによる「SOS」発信ルートの整備
    オペレーターがワンクリックでSVやリーダーに支援を要請できる体制を構築します。
  • 暴言・威圧対応を想定した支援機能の整備
    レスポンス支援(言い回しテンプレート)やQA集を、通話中でも確認できる形で即時表示できるようにします。
  • 画面ポップアップ等によるリアルタイム支援
    応対を中断せずに必要な情報へアクセスできる仕組みを整え、判断の迷いを減らします。

これらの施策は、対応品質のばらつきを抑えるだけでなく、現場スタッフの心理的負担を軽減し、安心して対応できる環境づくりに直結します。

④ 対応終了基準の明確化

長時間にわたる不毛な対応を防ぐためには、対応を終了する判断基準と権限を明確にすることが不可欠です。

【対応終了までの基本ステップ】

段階内容
① 警告「当社としての回答は以上です」と明確に伝える
② 注意同じ要求が続く場合は対応終了の可能性を告知
③ 終了改善が見られない場合、定められた手順で通話を終了
④ 記録対応内容を記録し、後日のトラブルに備える

「対応打切り」を個人判断にせず、会社として正式に認めたルールとすることで、現場は安心して行動できます。

仕組みづくりの最新トレンド

人手不足が進む中、カスタマーハラスメント対策を個人対応に頼るだけでは限界があります。近年は、テクノロジーを活用してリスクを早期に察知・制御する「仕組み化」が求められています。

① 通話・チャット・SNSデータの統合管理

カスタマーハラスメント対応が難しい理由の一つに、チャネルごとに態度が異なる顧客の存在があります。たとえば「電話では怒鳴るが、メールでは丁寧」といったケースも少なくありません。

そこで、電話・メール・チャット・SNSなどすべての顧客接点を、顧客ID単位で一元管理することが有効です。

着信や問い合わせの際に、以下の情報がポップアップ表示される仕組みが推奨されます。

  • 過去の対応履歴
  • トラブル発生履歴
  • 要注意顧客フラグ

この仕組みにより、オペレーターは事前に状況を把握でき、熟練者への転送やSVの介入など、迅速かつ適切な初動対応が可能になります。

② 音声・テキスト解析の活用

近年の音声認識AIは、通話内容をリアルタイムでテキスト化するだけでなく、声のトーンやピッチから感情の状態も解析できるレベルに達しています。

チャットやメールでは、以下の解析が自動化可能です。

  • 「殺す」「訴える」などのリスクワードの抽出
  • 攻撃的な表現や執拗な要求の検知

これにより、カスタマーハラスメントの兆候を早期に察知でき、事後対応ではなく、トラブル発生中のリアルタイム支援が可能となります。

③ ナレッジベース・応対テンプレートの活用

カスタマーハラスメント対応は属人化しやすいため、熟練者のスキルを形式知として共有することが重要です。

具体的には、「このような発言があった場合は、こう返す」といった成功パターンをナレッジベースに蓄積し、オペレーター画面にレコメンド表示します。

【活用する内容の例】

  • 標準化された毅然とした言い回し
  • 感情を刺激しにくい表現
  • 会社方針に沿った対応文言

誰でも同じ対応ができるようにすることで、組織全体の対応品質と防御力を高められます。

④ 自動アラート・エスカレーション支援

カスタマーハラスメント対応の属人化を防ぐには、リスク兆候をシステムが自動で検知し、管理者に通知する仕組みが欠かせません。人の判断を待たずに介入できるため、対応の遅れや現場の負担を軽減できます。

代表的なリスク兆候と自動対応の例は以下の通りです。

リスク兆候システムの自動対応
顧客の怒りレベルが急上昇SVへ即時アラートを通知
通話時間が30分を超過SVがモニタリング開始
リスクワードを検知エスカレーション対応を促進

アラートを可視化することで、SVは状況を即座に把握でき、モニタリングやウィスパリング(オペレーターにのみ聞こえる指示)を迅速に実施可能です。

その結果、現場の心理的負担を最小限に抑えながら、組織として一貫した対応が行えます。

データドリブンなリスク管理と改善

カスハラ対策を一過性の対応で終わらせないためには、蓄積されたデータを活用し、根本原因の特定と継続的な改善につなげることが重要です。

① VOC分析との連携

すべての苦情がカスハラに該当するわけではありません。
集積された応対データを分析することで、

  • 商品自体の不具合
  • 説明書やWeb情報の分かりにくさ
  • 案内フローやルールの不整合

といった、顧客の不満を生んでいる根本原因(VOC:Voice of Customer)を特定できます。

これらを改善することでクレーム総数そのものを減らし、結果としてカスハラの発生率低下につなげることが可能です。

② KPI・モニタリング指標の設計

従来のKPI(応答率、AHTなど)に加え、カスハラ対策の有効性を測る指標を設定します。

指標カテゴリ主なモニタリング項目
発生状況カスハラ認定件数
業務影響カスハラ対応による超過対応時間
再発傾向特定顧客からの再入電率
人的影響オペレーターのストレスチェック結果

これらの推移を継続的に確認することで、対策の効果や新たなリスク兆候を把握できます。

③ 定期レビューと改善サイクル

カスハラの手口や顧客行動は、時代とともに変化します。

そのため、対応マニュアルや判断基準は「作って終わり」ではなく、定期的な見直しが不可欠です。

  • 四半期ごとに実際の対応事例をレビュー
  • 判断基準や対応フローの妥当性を検証
  • 必要に応じてルール・仕組みを更新

このようなPDCAサイクルを回し続けることで、実態に即したリスク管理体制を維持・強化できます。

教育・研修による現場力強化

カスハラ対策を実効性のあるものにするためには、仕組みやルールの整備だけでなく、それを正しく運用できる人材の育成が欠かせません。

教育・研修は、現場の判断力と対応力を底上げする重要な施策です。

① ケーススタディを用いたトレーニング

実際に発生したカスハラ事例(個人情報を伏せたもの)を教材として活用し、判断力と対応力の標準化を図ります。

【主な学習観点】

観点目的
こじれた要因の特定初動対応や判断の問題点を可視化
エスカレーション判断適切な介入タイミングの理解
代替対応の検討再発防止に向けた選択肢の整理

成功事例と失敗事例の両方を共有することで、現場対応の再現性を高めます。

② ロールプレイによる対応力向上

知識理解にとどまらず、実践的な対応力を身につけるため、ロールプレイング形式の研修を実施します。

【重点的に訓練する対応行動】

対応行動研修の狙い
不当な要求を断る毅然とした態度の定着
警告文言を伝える対応終了までの流れを理解
通話終了の判断心理的ハードルの低減

実際に声に出して練習することで、現場で迷わず行動できる状態を作ります。

③ 管理職・SV向け判断トレーニング

カスハラ対応において、SVや管理職の判断は現場の安心感に直結します。
そのため、管理者向けには判断力を強化する専門トレーニングを実施します。

【管理者研修で強化するポイント】

項目内容
判断基準の理解法的観点・社内方針の整理
即時判断力エスカレーション時の迅速な意思決定
現場支援力オペレーターへの適切な介入とフォロー

管理者の判断が統一されることで、現場の混乱を防ぎ、組織として一貫した対応が可能になります。

従業員のメンタルヘルスケア支援

カスタマーハラスメント対策では、ルールやシステムの整備だけでは十分ではありません。企業を守るためには、現場で働く従業員のメンタルヘルスをいかに保護するかが不可欠です。

精神的負担を放置すると、離職や生産性の低下を招き、組織全体のパフォーマンスやリスクに影響します。

① 心理的安全性の確保

従業員が安心して相談できる環境は、カスハラ対策の基盤です。
「辛いと言っても評価が下がらない」「会社は従業員を守る」という姿勢が明確でなければ、被害は表に出ません。

心理的安全性を高めるために重要な取り組みは、以下のようなものです。

  • カスハラ被害専用の内部相談窓口を設置する
  • 上司を介さずに相談できるルートを用意する
  • 産業医や外部カウンセラーと連携し、専門的支援につなげる

これらを整えることで、従業員は「一人で抱え込まなくていい」と感じやすくなり、早期相談につながります。

② ストレス蓄積の早期把握

カスハラによる精神的ダメージは、徐々に蓄積していくケースがほとんどです。限界を迎える前に兆候を捉え、適切なフォローを行うことが重要です。

ストレスの変化を把握するためには、複数の指標を組み合わせて観測する必要があります。

観測手法目的・効果
定期ストレスチェック中長期的な心理状態の把握
1on1ミーティング本人の主観的な負担感を確認
パルスサーベイ日々のコンディション変化を可視化
勤怠データの確認欠勤・遅刻など客観的サインの把握

これらを連携させることで、「異変が起きてから対応する」のではなく、「兆しの段階で支援に入る」体制を構築できます。

③ 休息制度・対応ローテーションの設計

カスハラ対応は短時間でも大きな精神的消耗を伴います。そのため、個人の我慢に依存せず、制度として回復の時間を確保することが欠かせません。

具体的には、次のような設計が有効です。

  • 激しいカスハラ対応後は、強制的にクールダウン休憩を取らせる
  • 特定の従業員に負荷が集中しないよう、対応ローテーションを組む
  • スキルや経験に応じて対応範囲を調整する

負荷を組織全体で分散させることで、燃え尽きや離職リスクを抑え、安定した運用が可能になります。

導入時に整理すべき実務ポイント

カスハラ対策や関連システムは、導入自体が目的ではありません。重要なのは、現場に無理なく定着し、実際に機能する運用ができるかどうかです。

ここでは、導入時に整理しておくべき実務上のポイントを段階的に解説します。

① 現状課題の可視化

最初に行うべきは、「何がどの程度発生しているのか」を正確に把握することです。感覚論だけで進めると、対策が的外れになるリスクがあります。

具体的には、アンケートやヒアリングを通じて、発生頻度や被害内容、現在の対応フローにおける問題点を洗い出します。この段階で課題を言語化・構造化しておくと、後続の設計がスムーズになります。

② 関連部署との連携体制

カスハラ対策は、コンタクトセンター(CS)部門だけで完結するものではありません。
初期段階から関連部署を巻き込み、役割分担を明確にすることが重要です。

関連部署主な役割
法務部法的対応の可否判断、警察連携の基準整理
広報部SNS炎上時の対外発表、メディア対応
人事部従業員ケア、研修設計、社内規定の見直し

部門横断のプロジェクトチームを立ち上げることで、判断の属人化を防ぎ、組織として一貫した対応が可能になります。

③ 小規模PoC → 全社展開

いきなり全社規模で導入すると、現場の混乱や反発を招きやすくなります。そのため、最初は限定的な範囲で検証を行うステップが有効です。

特定のチームや窓口でPoC(概念実証)を実施し、実際の運用を通じて課題を洗い出します。その結果をもとにフローや設定を調整し、段階的に全社へ展開することで、定着率を高めることができます。

④ 定量評価と定性評価のバランス

導入効果の測定では、数値だけに偏らず、現場の声も重視する視点が欠かせません。対応時間の短縮や件数減少といった定量指標に加え、現場の実感も把握することが重要です。

たとえば、「安心して対応できるようになったか」「精神的負担は軽減されたか」といった声を定期的に収集すると、施策の実効性がより明確になります。現場の納得感が伴わない対策は形骸化しやすいため、注意が必要です。

まとめ

カスタマーハラスメント対策は、現場担当者の我慢や個人スキルだけでは解決できません。属人的な対応に依存し続けると、従業員の疲弊や離職リスクは避けられず、企業全体の対応力も向上しません。

必要なのは、明確な判断基準と標準化された対応フロー、そしてデータやテクノロジーを活用した「仕組みとしての運営」です。リスクの予兆を組織として捉え、誰が対応しても一定水準の判断と行動ができる体制を整えることが、従業員と企業の双方を守る最も現実的で持続可能な方法と言えるでしょう。

さらに重要なのは、対応結果を振り返り、改善につなげるサイクルを回し続けることです。データに基づく検証と現場の声を反映した見直しを重ねることで、対策は形骸化せず、実効性を維持できます。

この改善サイクルが定着すれば、従業員体験(EX)は向上し、判断に迷うことや過度なストレスが軽減されます。その結果、応対品質は安定し、健全で質の高い顧客体験(CX)につながります。

従業員を大切にする企業こそ、顧客からも信頼され、選ばれる時代です。今こそ、一時的な対処にとどまらず、実効性のあるカスタマーハラスメント対策基盤の構築に踏み出すタイミングです。

私たちは、カスタマーハラスメント対策システムの提供にとどまらず、導入前の検討段階から運用設計、現場に寄り添ったカスタマイズまで、一貫して支援しています。

現場の負担を軽減しながら応対品質を高めたい方は、まずはご相談ください。

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