【ファウンダー日記】3という数字(続き)

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伊集院 静氏の新聞小説「琥珀の夢―小説、鳥井信治郎と末裔」は、421回・1年3ヵ月以上に亘る連載で9月に完結した。
未だその残映が強すぎて、サントリーの社名由来も三鳥井からか、とさえ思えてくる。実際には赤玉ポートワイン・お天道様のSUNと創業者の名前からきているらしい。小説の中では、サントリイではピンとこないのでサントリーとすっきりしたネーミングになったというくだりがあった。
同社の現在の経営は五代目となるが、創業家以外から「プロ社長」を迎えた衝撃の人事で話題になったことは記憶に新しい。


一方、四代目 佐治 信忠氏の代にサントリーグループとなったバーボン老舗・大手のJim Beamの歴史はもっと古く、現在は七代目のマスター・ディスティラー・Fred Noe氏とのことだが、初代Jacob Beam氏より連綿と続く同族経営のウイスキー蒸溜所だ。
その系統を称えるかのように、ボトルには七世代の名前と似顔絵、生存年のラベルが貼ってある。またそこには、「代々が我々の歴史を築きあげてきた、我が心のケンタッキー、我が魂のバーボン」というようなことが謳われている。Jim Beamを手に取る機会があったら、そのラベルを眺めながらチビチビとやるのも楽しい。


小説の中では、鳥井 信治郎が東京で人気を博している電気ブランを紹介される場面が出てくる。神谷 傳兵衛によるブレンドだ。明治15年に誕生した電気ブランは、ブランデー、ワイン、ジン、ベルモットなどがブレンドされているとのこと。
浅草の神谷バーで手に入る復刻版ボトルの裏ラベルには、”電気の珍しい明治のころ、ハイカラなものには電気何々と名付けることが流行し”とある。


往時を偲び、福山 小夜さんの小説挿絵と復刻版ボトルを比べてみた。130年の歴史を噛み締めながら。
それにしても、さすが宣伝のサントリー。その下にキチンと六段広告を出している。それも、かって社運を賭けてマーケティングしたビールの…「日本ギフト大賞受賞」というMALT’Sの。

タイトルはだ。そこで…

伊集院氏が後日譚で、”信治郎の生き方の前提には、「三方良し」という売り手、買い手、そして世間の三方が豊かになる商いでないと真の商いではない、という近江商人のビジネスに対する基本があることを知った”と言っている。”経営の神様 松下幸之助が信治郎を生涯 師と仰いだ理由は十分過ぎるほどにあった”とのこと。

「売り家と唐様で書く三代目」というように、大概は良い家督は続かないが、ブレンダ―を体と心で継いでいく家系はこれからも続いていってほしい。ビール事業参入を決断した中興の祖、二代目 佐治 敬三氏は、”我が恩師は『常に、”何か新しいこと”(エトバス ノイエス)に挑戦しろ』と教えて下さった”と述べている。「やってみなはれ!」の精神は、どんなビジネスにも大きく大きく響いている。

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