【ファウンダー日記】新聞メディアの終焉?

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昔は満員電車の中で夫々に工夫しながら新聞や本を読んだものだが、今は皆が一心不乱にスマホとニラメッコしている。誰も新聞を読んでいない。この10年での変りようだ。

アメリカを代表する新聞社であるワシントン・ポスト紙がAmazonのベゾス氏に買収されるという出来事は耳新しい。超ブランドの同紙も、支局を全面閉鎖し、政治中心の報道に絞るなど経営資源の集中化を図ってきた。日本では聞いたこともない「新聞社のリストラ」を断行してきた同紙だが、時の流れ…メディア・シフトの前に、新メディアの軍門に降らざるを得なかったようだ。

躍進に次ぐ躍進、Kindleを掲げるベソス氏

今回、なぜ新聞メディアを取り上げることにしたのか。紙媒体が滅び行く運命と思わせる同紙の身売り事件が直接のきっかけではない。それ以前の問題、日本の新聞業界の呆れるほど古い体質に辟易しているからだ。

さて、東京への誘致を歓迎する、しないに拘らず日本人には大きなニュースであった2020 Olympic開催地の発表時のことだった。下の写真のとおり、新聞で東京開催が報じられたのは2日後の、しかも夕方であった。7日(土)深夜の決定だったので、日曜日の朝刊には間に合わないとしても、週明けの朝刊では大きく取り上げられるべき記事だったと思う。しかるに、休刊日協定(協定はないと言うが、事実上の”談合”)でカルテルよろしく全ての新聞社が休刊した。いち早く読者にニュースを伝えるという新聞本来の使命よりも業界内の都合が優先されたわけだ。過去には、休刊予定日に重大ニュースが重なると予想される時は休刊日の調整をしたことがあるらしいが…。
世界的に見ても、一斉休刊というのは聞いたことがない。TV放送や電子ニュース配信サービスが一斉休業するだろうか。新聞各社はTokyoが選ばれないと確信していたのだろうか。多分、そんなことさえ検討しなかったのだろう。読者不在・顧客無視の業界も今どきは珍しい。

2日後の夕方に発表となった…何とも間の抜けた1面記事
まさにプロダクトアウトの発想だ

ただ皮肉なことに、こんな大きなニュースがあった時に一斉休業しても世間は何も影響を受けなかった。誰も文句を言う人がいない。憤慨するよりもサッサとメディア換えしてしまったのだろう。新聞はもう要らない…新聞業界の衰退傾向を新聞自身は報じないが、新聞の終焉は目前に迫ってきている。有効発行部数でさえキチンと公表しない最後に残った古い体質の業界、という新たな気付きを呉れたIOC発表のタイミングだった。
(ところで、一般読者は古新聞のリサイクルに協力を惜しまないが、毎日大量に発生する何百万部とも言われる新・新聞の束は誰が責任を持って処理しているのであろうか?捨てるために印刷している。何とも悲しい世界だ。)

私は紙媒体に未練を持っているので、ついでながら、もう一つ苦言を呈したい。

新聞各社とも電子媒体での記事の配信を始めているが、私が読みたいと思っているN紙に限って言うと、同紙の場合は月単位での購入方法しかなく、しかも解約手続きや支払い解除が面倒そうなイメージがあるので申し込みにくい。既に月極めで本紙購読しているのに、追加料金を支払ってまで電子版を毎日配信してもらおうとは思わない。
ただ、出張時や休暇時には必ずしもタイミングよく紙媒体を手に入れられるとは限らない。現にN紙を置いていないホテルやリゾート地のコンビニで不便を感じたことがある。そんな時、Kioskスタイルで気軽に購入できるようなプランが考えられないのだろうか?新聞社チョイスのおススメ記事の配信でなく、紙面全体を眺めたいのだ。
こんなことは電子媒体が最も得意とするOn Demandの仕組みなのだが、N紙サイトのどこを探しても、このような要望を受け付ける窓口が見つけ出せない。「すぐに申し込み」以外は窓口を閉ざしている状態だ。

ところで、新聞業界は長年活字を拾って版組みしていたが、1970年代から80年代にかけてCTS(Computer Typesetting System)=コンピューターによる組版システムが導入され始めた。これは米国からもたらされた仕組みであるが、そのままでは使えなかった。日本語の記事は縦書きで且つ右から左に行換えされていく。たまには横書きもある。また、文章が同一記事枠内に埋め切れない場合、いきなり別の面に飛ばしてしまうという米国流の粗っぽい組版は日本では受け入れられなかった。
各紙はコンピューターメーカーとの共創で苦労しながらも何とかこの問題をクリアーし、活版工の世界からからキーボード入力のシステムに革新された。これが、新聞各社の近年における大きな転換点であった。

私自身も80年代にY英字新聞のCTS化に参加した経験がある。英字なので米国製シェアード型ワードプロセシングシステムで記事ファイルを作成する仕組みを導入した。
数十人の外国人・日本人記者が同時にインプットでき、数人のデスクが画面から記事の取捨選択、割り付け等をしていく。これにより、紙面作成スループットの劇的な改善が図れた思い出がある。
ISBN:4163406409
メディアの興亡〈上〉 (文春文庫) メディアの興亡〈下〉 (文春文庫)

杉山隆男氏『メディアの興亡』(1986) 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作
当時のCTS化への変革過程と新聞各社の内幕が描かれている

あれから30年…、新聞業界は第2の転換点にあると言える。ワシントン・ポスト紙は、無料ネット配信の先駆者だったが、結局、紙媒体と電子媒体との共存モデル、あるいは電子媒体での新ビジネスモデルを作り上げることができなかった。日本の各紙の今後は一体どうなるのであろうか。電子媒体を云々する以前に旧態依然とした体質改善が先決であるが、いずれにしても、2020年のTokyo Olympicの頃までにはその「興亡」が見えそうな気がする。

杉山隆男氏の「メディアの興亡」は、メディア界の頂点に君臨する当時の大新聞同士の覇権争いを描き出したが、舞台は一変し、異メディア間の競争になってきている。果たして、「メディアの興亡・パート2」の結末は…。

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